伝統工芸から生まれた最新ガジェット「CHACCARD(チャッカード)」

カードサイズに“日本の刃物技術”を凝縮
CHACCARDは、クレジットカードとほぼ同じサイズの多機能ツールです。小さなボディに、ノコギリ、鉋(かんな)、火打ち石&火起棒、麻紐カッターなど、実用的な機能を詰め込みました。作り手は、刃物のまち・岐阜県関市の職人たち。0.1mm単位で“合わせ”を追い込む技術を背景に、持ち歩ける道具として仕上げています。
関市の職人技を日常に届けるという発想
関市は日本刀づくりの歴史を受け継ぐ刃物産地です。プロ用ピンセットやハサミづくりで培った、細部を正確に仕上げるノウハウを、アウトドアや日常でも使える形に落とし込んだのがCHACCARD。小さくても“仕事ができる”ことに重きを置き、手作業で一つひとつ仕上げています。
クラウドファンディング達成(目標の1020%)が示す支持
プロジェクトはクラウドファンディングで目標の1020%を達成しました。使いやすさと語れる背景(職人技・日本製)が、ガジェット好きやミニマリスト、防災ニーズまで幅広い層に評価された結果です。実用性とストーリー性、その両方が支えになっています。
なぜ“カード型”である必要があるのか(思想と機能の一致)
カード型はただの見た目ではありません。
- 携帯性:財布やカードケースに入る=忘れない・常に持てる。
- 即応性:非常時やキャンプで、必要な機能にすぐアクセスできる。
- 精密性:薄さと面積が決まっているからこそ、刃の角度や“しなり”を計算し、使いやすさを設計できる。
「毎日持てる実用工具」という思想と、職人の精密な調整が、カードというフォームで一致しています。
THE PROCESS密着取材:世界三大刃物産地・関市の“合わせ”の技
動画:『日本一の刃物の町が生み出すピンセット制作過程』
「THE PROCESS」は、“プロの仕事がどのように行われているか”という“プロセス”そのものに価値を見出し、その現場を淡々と、そして丁寧に映像化するドキュメンタリーチャンネルです。
天研工業の“合わせ”の技を丁寧に記録していただきました。
まずは映像で、職人の手元の緊張感を感じてください。
https://www.youtube.com/embed/Qy4ysa4l21c?si=DmPl-JlTwAYpgZsk
職人の目と手が生む「0.1mmの精度」—ピンセット作りが示す技術基盤
ピンセットの作り込みは、CHACCARDの基礎体力です。刃先の“ズレ”を0.1mm単位で詰め、角度・しなり・弾性を指先で合わせます。見た目の美しさだけでなく、狙った一点を確実につかむための実用精度が要です。この“合わせ”の感覚が、そのままカード内の各パーツ(ノコギリやカッターの当たり、火打ち棒のストローク感)へ転写されます。
伝統=再現不能な熟練値:曲げ角度・クッション性・刃先の“ズレゼロ”
治具で寸法は揃えられても、最後の「合わせ」は数値化しきれません。曲げ角度を一度に決めず、微小な曲げ→当たり確認→再調整をくり返す。クッション性(握った時の反発力)も材料の個性を読みながら整えます。結果、道具が「まっすぐ効く」。この熟練値こそ、伝統工芸の真ん中にある“再現しにくい価値”です。
CHACCARDに継承される思想:精密・実用・美意識
CHACCARDは見せ道具ではありません。
- 精密:刃の角度や当たりが安定し、狙った作業がしやすい。
- 実用:薄いのに“仕事の速さ”が出る手応え。
- 美意識:仕上げのラインや触感まで、使い手の気分を上げる。
職人の「使って気持ちいい」を求める姿勢が、コンパクトな一枚に凝縮されています。
取材で見えた“手作業”の割合は?量産と品質の両立は?
多くの工程で機械は使いますが、最後のキモは人の手です。治具で基準をつくり、最終の合わせ・検品を人間の感覚で締めることで、量をつくりながら質を落とさない体制をとっています。CHACCARDも同様に、パーツ精度(機械)×最終仕上げ(手)が噛み合うことで、量産品に“職人物”のフィーリングを残しています。
CHACCARDの機能とスペック

サイズ/素材/構成(W55.7×H91×D8.7mm)
厚みは8.7mm。クレジットカードとほぼ同じ縦横サイズで、財布やカードケースに入ります。ケース本体は強化樹脂、刃物とノコギリは焼き入れ加工の炭素工具鋼、ストライカーは高耐食ステンレス。小さくても、工具としての強度を確保しています。
主な機能
- ノコギリ:小枝のカットに最適。押しても引いても切れる刃つけで、アウトドアの下準備がスムーズ。
- 鉋(かんな):木を薄く削ってフェザースティックを作り、火起こしの着火材料を用意。
- 火打ち石&火起棒:ストライカーでこすって火花を出し、麻やティンダーに着火。
- 麻紐カッター:ロープや結束紐の処理に。段ボールのPPバンドも切れます。
- 栓抜き・缶切り(通常版のみ):飲み物や非常時の缶開けに対応。
※インディゴメタル版はこのあと詳しく紹介します(マイナスドライバー搭載/栓抜きなし)。
使い勝手:素手で扱える安心感と携帯性(EDC)
工具は出し入れのストロークが短く、素手で扱える設計。指当たりが痛くならないよう、エッジは要所で面取りしています。
- 携帯性:ポケット・カードケースに収まり、毎日持ち歩ける。
- 即応性:キャンプや停電時など、必要なときにすぐ使える。
- 安定感:薄型でも、刃の当たりとしなりを職人が調整しているため、狙った作業がしやすい。
実使用の耐久性は?(素材・焼入れ・想定寿命)
刃物パーツは焼入れで硬度を上げ、欠け・摩耗に強くしています。使い終わりに水分を拭き、乾いた状態で収納すれば、長期間の使用に耐えます。替えが利かない“一点物”ではなく、実用品として長く使うための設計です。
どの機能が“出番が多い”?
日常では麻紐カッター、アウトドアでは鉋→火打ちの順で使用頻度が高め。非常時は缶切り(通常版)が活躍します。まずは家や車に一つ、EDCとして一つ、という持ち方がおすすめです。
通常版とインディゴメタル版の違い

通常版CHACCARD
- 機能差:栓抜き・缶切りを搭載、マイナスドライバーは非搭載。
- こんな人に:キャンプやBBQ、家庭でも飲料の栓抜きや缶開けを使う場面が多い人。防災用に缶切りを持ち歩きたい人。
- 印象:実用一点張りで、日常〜アウトドアの“困った”にすぐ効く万能ベース。
CHACCARDインディゴメタル
- 機能差:マイナスドライバーを搭載、栓抜きは非搭載。
- 素材意匠:金属を天然藍で染めた「インディゴメタル」を一部に使用。
- バリエーション:
- 炎<HONOO>
- 花火<HANABI>
- 槌目<TSUCHIME>
すべて手作業仕上げのため、同じ模様は二つとない一点物の表情。
- 期待できる特性:藍は消臭・抗菌作用が期待される素材として知られています。見た目の美しさと、日常での清潔感の両立をめざしています。
- こんな人に:意匠性(デザイン)とストーリーを重視する人。ドライバーをよく使うDIY派、カメラや家具のマイナスねじを回すシーンがある人。
共通スペックと使い分けの目安
- 共通サイズ:W55.7 × H91 × D8.7mm(カードサイズ)。
- 共通機能:ノコギリ/鉋/火打ち石&火起棒/麻紐カッター は両モデル共通。
- 使い分け:
- 飲食・防災寄りなら → 通常版(栓抜き・缶切り)。
- 工具・意匠寄りなら → インディゴメタル(マイナスドライバー+唯一無二の意匠)。
インディゴメタルは色落ちする?経年変化の実例とケア
- 経年変化:金属の藍染は、使い込みで色味が深まる/艶が出るなどの変化(パティナ)が出ます。摩耗しやすい角部は、明度がわずかに上がることがあります。これは味わいとして楽しめる設計思想です。
- お手入れ:乾いた柔らかい布でから拭き。汗や水分がついたら早めに拭き取り、乾燥して収納。
- NG例:コンパウンドなどの強研磨剤、塩素系薬剤、長時間の浸け置きは避けてください。意匠面の風合いを損ねる可能性があります。
燕三条の鋸と関市の刃物技術が合流する理由

燕三条の鋸:百年超の「よく切れる」設計
CHACCARDのノコギリは、新潟・燕三条で作られます。ここは金属加工で有名な土地。「鋸の歴史は中屋の歴史」を掲げるメーカーの技術が入り、刃の形・目立て(歯の並び方)・熱処理まできっちり設計されています。結果、小枝を切る時に引っかかりにくい、押しても引いても切れるという手応えを実現しています。
関市の「合わせ」:0.1mmを詰める仕上げ力
岐阜・関市は日本刀の流れをくむ刃物の町。天研工業はピンセットやハサミで培った“合わせ”の技が強みです。パーツ同士の当たり、しなり、触れた時の角(エッジ)の丸め方など、手の感覚で最終調整。この仕上げがあるから、カードサイズでも狙った作業がストレスなくこなせる道具になります。
パーツ協業が生む「切れる・掴める・耐える」
- 切れる:燕三条のノコギリが、薄い一枚でも確かな切断力を担当。
- 掴める:関市の“合わせ”の思想が、刃やストライカーの当たりを安定させ、滑らず確実に作業できる感覚を生む。
- 耐える:炭素工具鋼の焼入れ、ステンレスの耐食性、ケースの強化樹脂で屋外でも長く使える。
なぜ他社が真似しにくいのか(分業×熟練の壁)
図面だけでは再現が難しいのが最終仕上げの感覚値です。さらに、産地ごとの強みを組み合わせる分業体制には、信頼関係と長い共同開発の積み重ねが必要。
- 燕三条:大量生産でもブレない刃物設計と目立て。
- 関市:個体差を読んで仕上げる感覚的な“合わせ”。
この二つがかみ合うことで、小さくても本気で使えるカードツールが完成します。



