日本のものづくりDNAが一枚のカードに宿るまで
主役は「CHACCARD(チャッカード)インディゴメタル」
名刺入れにすっと収まるカードサイズ。その中に、切る・削る・火を起こすなどの“使える機能”と、日本各地の技と物語がぎゅっと詰まっています。
「CHACCARD(チャッカード)インディゴメタル」は、金属を藍で染め上げた新素材“インディゴメタル”をまとった特別モデル。見た目の美しさだけでなく、長く使える耐久性も追求しています。
“語れる素材”としての価値
インディゴメタルは、徳島の天然藍による金属染色という前例の少ない挑戦で生まれました。布を染めるイメージの強い藍で、あえて金属に挑む。そこに、岐阜・関の精密加工、燕三条の鋸づくりが重なります。
商談のアイスブレイクに—「これは日本各地の職人技が合わさったカードツールです」。贈り物なら—「同じ模様は二つとない一点物です」。そう言えるだけの背景が、この一枚にはあります。
天研工業のものづくり思想と“合わせ”の技術
関市の刃物文化と天研クオリティ
岐阜県関市は、刀づくりの技が今も生きる「刃物のまち」。天研工業はこの地で1926年創業、父子三代で精密刃物を作ってきました。私たちが大切にしているのは、「折れず、曲がらず、よく切れる」という日本刀の精神を、現代の道具に落とし込むこと。見た目だけでなく、手にしたときの安心感と信頼感まで設計します。
0.1mmを詰める「合わせ」が生む使い心地
ピンセットや毛抜きで培った“合わせ”の技術は、CHACCARDにも生きています。先端がズレず、均一に当たるか—0.1mm単位で追い込みます。
たとえば麻紐カッター。刃の角度、ケースのクッション性、たわみ量まで調整し、「サクッ」と切れる感触を作ります。数字で語れる精度と、手の感覚で追い込む最終仕上げ。マニュアル化できない熟練の領域が、使い心地の差になります。
OEMで磨いた設計→プロダクト開発へ
天研工業は長年、さまざまな業界のOEMを担ってきました。厳しい品質基準や多様な素材要件に応える過程で、図面の読み解きと量産の再現性を鍛えています。CHACCARDでは、その知見を自社開発に転用。多機能でも“無理がない構造”にこだわり、薄さ・強度・安全性のバランスを最適化しました。
検査体制と再現性:一点物性と品質の両立
インディゴメタルは一つひとつ模様が違う「一点物」。同時に、道具としての機能は同じ品質でなければいけません。
そこで私たちは、
- 刃部:焼入れ後の硬度チェック、刃付け面のムラ検査
- 合わせ:先端の光漏れ、引っかかり、たわみ量の測定
- ケース:組付けのがたつき、携行時の安全性テスト
を行い、合格品だけを出荷します。見た目は唯一無二、機能は常に一定—この両立が「天研クオリティ」です。
素材革命|金属を藍で染める「インディゴメタル」に出会う

金属×藍染—常識への挑戦
布は染まる。でも金属は?
この“無理そう”に挑んだのが、金属を天然藍で染め上げる「インディゴメタル」です。大分県の長尾製作所が2016年に始めた「藍プロジェクト」から約3年の試作を重ね、独自の染料槽と工程を確立。温度・湿度・染料の状態を見極め、最適なタイミングで引き上げ、職人の手で酸化発色させます。
結果、金属の表面に深い藍色の層が生まれ、光の角度で青が揺らぐ—布とは違う、金属ならではの“藍の表現”が実現しました。
インディゴメタルの美と機能(耐久・抗菌・経年変化)

- 美しさ:奥行きのある「JAPAN BLUE」。同じ工程でも模様は一つとして同じになりません。
- 耐久性:ケースの一部にインディゴメタル、刃物は焼入れで硬度を高めた炭素工具鋼、ストライカーは耐食ステンレス。素材の役割を分け、全体の耐久性を底上げ。
- 機能性:藍は消臭・抗菌作用でも知られます。携行時間が長いEDCでも衛生的。
- 経年変化:使うほど色に深みが出て、艶が増します。革のエイジングに近い楽しみ方ができます。
徳島「にし阿波」の文化的背景とストーリー価値
インディゴメタルに使う藍は、400年以上の歴史を持つ徳島産の天然藍。世界農業遺産に認定された「にし阿波」の文化と技が、素材の根っこにあります。
天研工業(岐阜・関)、鋸のパーツを担う燕三条、そして徳島の藍。日本の産地がリレーのようにつながって、一枚のカードに集約されました。これは“機能の寄せ集め”ではなく、“文化の結晶”です。
触感・光沢の違い(ビジネス用途での上品さ)
インディゴメタルは、しっとりとした手当たりと、鈍い艶(セミグロス)が特徴。ギラつかず、会議室でも悪目立ちしません。
会食や商談で取り出しても、派手さより「質の良さ」が先に伝わるトーンです。スーツの内ポケットに入れても布地を傷めにくいよう、ケース外周のエッジは指触りを考えて面取りしています。
産地連携|三つ巴の日本品質(関 × 燕三条 × にし阿波)

刃物のまち・関市が担う精密加工
CHACCARDの“使える薄さ”と“安心できる強度”は、関の職人による微調整から生まれます。
刃先角度の度数、たわみ量、ケースとの当たり—図面だけでは決まらない“最後の0.1mm”を手作業で追い込み、携行時のガタつきや誤作動を抑えました。ピンセットづくりで培った「合わせ」の感覚が、カード形状でも確かな噛み合いを実現します。
燕三条の鋸づくり—中屋の百年技術
小枝を切る“ノコ”は、燕三条の老舗・中屋の技術がベース。
素材硬度に合わせた歯付け、目立て、熱処理まで一貫して最適化し、カードサイズでも“噛み込まず、よく切れる”をキープします。薄さと切れ味のトレードオフを、精密な熱処理と刃形で乗り越えました。
藍染の知見—インディゴメタルの仕上げ工程
金属の藍染は、温湿度・染料の状態・引き上げタイミングが勝負。
インディゴメタルのパーツは、下地研磨→脱脂→染色→酸化発色→保護仕上げの順で、職人が状態を見極めながら仕上げます。結果として、HONOO/HANABI/TSUCHIMEそれぞれの模様が、光の角度で表情を変える“奥行き”を持ちます。
サプライチェーンの持続性とトレーサビリティ
「一点物の美しさ」と「量産品質」を同時に守るために、各工程で基準化と記録を徹底しています。
- 材料ロットと処理条件を紐づけて追跡管理
- 刃部硬度、合わせ精度、表面状態の検査ログを保存
- 不具合要因を工程単位に切り分け、再発防止を運用
産地の技を掛け合わせても、品質は“運任せ”にしない。物語と再現性、その両輪で成り立つのがCHACCARDインディゴメタルです。
プロダクトの核|機能設計とデザインの意思

多機能を“使える”にする配置哲学
ただ機能を詰め込むのではなく、指の動きと重心バランスから配置を決めています。
- 取り出す→構える→使う、の3動作が自然に流れるよう、引っかかりを避けた面取り。
- 力をかける部位はリブ(補強)で補強し、薄さと剛性を両立。
- 収納時は刃部が露出しない構造で、ポケットやバッグを傷めにくい。
火起こし/鉋/ノコギリ/麻紐カッターの実用性
- ノコギリ:小枝のカットに最適。歯の角度とピッチを最適化し、薄いのに噛み込みにくい。
- 鉋(かんな):焚き付けづくりを想定。木材表面を薄く削れて、着火用の細い削り屑が作れます。
- 火打ち石&火起棒:ストライカーで火花を飛ばし、ファイヤースターターとして使用。アウトドアや非常時に有効。
- 麻紐カッター:ロープ・結束紐の処理に。“サクッ”と切れる角度に手仕上げ調整。
- マイナスドライバー(インディゴメタルのみ):日常のネジ締めに活躍。※通常版は栓抜き搭載/インディゴメタルは栓抜き非搭載。
携行性と安全性(強化樹脂ケースと金属パーツ)
- ケース本体:強化樹脂で軽量&耐衝撃。角はラウンド処理で衣類への当たりを軽減。
- 刃・ノコ部:焼入れで硬度を高めた炭素工具鋼。切れ味と耐摩耗性を両立。
- ストライカー:高耐食ステンレスでサビに強い。
- インディゴメタル:ケースの一部に採用。美観と耐久を両立し、経年で味わいが増す。
- サイズ:W55.7 × H91 × D8.7mm。名刺入れやカードスロットに収まる設計。
3つの表情|HONOO/HANABI/TSUCHIME

各パターンの意匠と意味
- HONOO(炎)
炎がゆらめくような流線模様。力強く、ダイナミック。アウトドア好きや、情熱的な印象を贈りたい相手に。 - HANABI(花火)
細かな散り模様が夜空の火花のよう。軽やかで華やか。デザイン・アート系や、記念日のギフトに似合います。 - TSUCHIME(槌目)
金槌で打ち出したような凹凸感。工芸らしい“渋さ”と重厚感。ビジネスの場や年上の方への贈り物に。
どの柄も同じものは二つとない一点物。光の角度で濃淡が変わり、ポケットから出すたびに表情が違って見えます。
使い込むほど深まる“JAPAN BLUE”
最初は透明感のある青、使うほど艶と奥行きが増します。微細な擦れも味に変わるので、革小物のように“育てる楽しみ”があります。
気品のあるセミグロス仕上げで、会議室でもキャンプサイトでも浮かない—それがインディゴメタルの懐の深さです。
誕生の舞台裏|開発ストーリーと意思決定
クラウドファンディングでの検証と学び
最初の一歩はクラウドファンディングでした。目標の1020%を達成し、「小さくて本当に使える道具を、毎日持ち歩きたい」という声が多く集まりました。
支援者のコメントからは、
- 名刺入れに入る“薄さ”が大事
- 火起こしや鉋など“実用機能”はしっかり欲しい
- ギフトで渡せる“見た目の良さ”も重要
というニーズがはっきり見えました。これが最終仕様の土台です。
製造プロセス—トライ&エラーの記録
開発では何度も作り直しをしました。
- 薄さと強度:薄くするとたわみが出る。→ 力のかかる場所にリブを追加し、剛性を確保。
- ノコの切れ味:カードサイズだと噛み込む。→ 歯ピッチと角度を見直し、熱処理条件を最適化。
- ストライカーの火花:思ったより飛ばない。→ エッジ形状と材料を再選定し、安定して着火できる仕様に。
- インディゴメタルの発色:色ムラが出る。→ 下地研磨と脱脂のルールを厳密化。ロット管理で再現性を向上。
ユーザーの声が最終仕様に与えた影響
テストユーザーや支援者のフィードバックで、細部を修正しました。
- 安全性:ポケット内での引っかかりを減らすため、外周をさらに面取り。
- 静音性:可動部のガタ音を小さくするため、組付け時の公差を追い込み。
- 機能選別:インディゴメタルはマイナスドライバーを採用、代わりに栓抜きは非搭載。ビジネスや整備シーンでの“使える一本”を優先しました。
耐久試験で却下した案・判断基準
- 過度な薄肉化:携行性は上がるが、曲げや衝撃に弱い → 却下。
- 派手な表面コート:見た目は映えるが、擦り傷で劣化が目立つ → 却下。
- 多機能の詰め込み:重量増・誤動作のリスク → “必要十分”に絞る決断。
判断の軸はいつも「毎日持てる薄さ」「実用で裏切らない強度」「長く好きでいられる見た目」の3点でした。
サステナビリティと地域連携
資材の選定と再利用の取り組み
天研工業は「長く使える=最小の環境負荷」という考え方を軸に、素材と工程を選びます。
- 適材適所の素材配分:刃は焼入れ炭素工具鋼、ストライカーは高耐食ステンレス、ケースは強化樹脂、意匠部にインディゴメタル。無理な“オール金属化”は重量や製造エネルギーの増大につながるため、耐久と機能が最大化する配分に。
- 廃材の再活用:ピンセット製造で出るステンレスの端材を、社内のマスクスタンドなどに再利用。小さな端材も用途を見つけ、捨てない設計に寄せます。
- 保守性:部品交換・調整に対応できる設計で、丸ごと廃棄を避ける運用を徹底します。
地域文化・雇用・観光への波及
CHACCARDインディゴメタルは、関(岐阜)×燕三条(新潟)×にし阿波(徳島)を結ぶ製品。
- 地域技術の継承:若手が熟練者の工程に触れる機会を増やし、技能の見える化を進めています。
- 産地間コラボの可視化:製品ページや同梱物で産地名を明示。ユーザーが“どこで作られたか”を語れると、地域への関心と訪問動機が生まれます。
- イベント・祭りの支援:地域イベントへの協賛・出展を継続し、作り手と使い手が直接つながる場を増やします。
ものづくりの継承としてのプロダクト
一枚のカードに宿るのは、道具の価値だけではありません。
- プロの要件に耐える品質基準を保ちつつ、日常でも扱いやすい仕様に落とすことで、「よい道具を長く使う」文化を広げます。
- 一点物の美しさを採り入れることで、交換ではなく愛着による長期使用を促します。
- 情報の透明性(工程・素材・検査)を開示し、買い手が納得して選べる環境をつくります。



